バイオエシックス '95 |
(バイオエシックス用語集 1995)
1994年は、国際的水準から見ると極めて異質な日本のバイオエシックス事情を内外に示した年だったといえる。インフォームド・コンセントの欠如から、新薬の使用や臨床治験によって患者が死亡し、しかも社内情報によるインサイダー取引など「企業倫理」に違反する悪質な行為も明らかになった。本来、「審査委員会」の許可が必要な投薬内容の変更を「医師の裁量の範囲内」とする医学研究者の見解は国際的に見て全く通用しない。多くの患者とその家族から待ち望まれている臓器移植関連法案の成立は、政局混乱の影響で大きく遅れている。 |
いのちの主権者 |
いのちの境界をめぐって |
*厚生省が承認した緩和ケア病棟のある病院一覧 (1994. 02. 01 現在)
病院名 | 所在地 | ベッド数 (総数) | 承認年月日 | 備考 |
三方原病院 | 静岡県 | 27 (758) | 90.04.25 | 認可第1号 |
淀川キリスト教病院 | 大阪府 | 23 (600) | 90.04.25 | ___ |
救世軍清瀬病院 | 東京都 | 30 (195) | 90.05.29 | ___ |
福岡亀山栄光病院 | 福岡県 | 22 (178) | 90.08.29 | ___ |
坪井病院 | 福島県 | 18 (312) | 90.11.29 | ___ |
上尾厚生病院 | 埼玉県 | 131 (120) | 92.02.25 | ___ |
国立がんセンター東病院 | 千葉県 | 25 (425) | 92.07.01 | 国立初 |
富山県立中央病院 | 富山県 | 15 (800) | 93.02.25 | 自治体初 |
長岡西病院 | 新潟県 | 22 (136) | 93.03.12 | ___ |
東札幌病院 | 北海道 | 28 (251) | 93.09.01 | ___ |
神戸アドベンチスト病院 | 兵庫県 | 8 (116) | 93.09.29 | ___ |
ピースハウス病院 | 神奈川県 | 22 (22) | 94.02.01 | 独立型第1号 |
いのちの質の向上をめぐって |
*全人医療の考え方
___ | 全人医療の視点 | 従来医療の視点 |
病 気 | ||
患者の立場 | ||
医療従事者 の役割 |
||
治 療 | ||
健 康 |
*バイオエシックス委員会 (アメリカの例)
名称 (英文略称) | 医学研究 施設内審査委員会 (IRB; Institutional Review Board) |
病院 倫理委員会 (HEC; Hospital Ethics Committee) |
小児患者バイオエシックス 審査委員会 (IBRB; (Infant Bioethics Review Board) |
設置基準など | National Research Act. PL-93-348 (1974年7月12日) |
各病院による基準作り (IRBのモデルによる) および大統領委員会 (PCSEPMBBR; President Commission for the Study of Ethical Problems in Medicine and Biomedical and Behavioral Research) 報告書中の米国・法と医学学会 (ASLM; American Society of Law and Medicine and Ethics) による提案など | IBRB (Infant Bioethics Review Board), 米国小児学会提案 (1983年7月) ICRC (Infant Care Review Committee; 小児看護審査委員会), 連邦規則45-CFR-Part84 (1984年1月12日) 勧告 |
目的と対象 | 連邦政府の管轄の医学研究・医療施設 (および補助金を受けている研究計画) での臨床実験の対象となる人の人権の保護および倫理上の問題点の審査を含む治験実施要綱の全体的審査 | 自ら判断力を行使できない患者のために生死にかかわる医療処置をするに当たっての倫理的な問題点の審査、その他の患者または家族・関係者の要請による | 新生児・小児患者を対象とする。 患者の家族・関係者および施設内のスタッフなどの要請による審査 |
患者の構成・人数と 専門分野など |
1. 同一性別、同一職業などによる独占を避ける 2. 宗教・法律・倫理などの専門家を加える 3. 地域 (コミュニティ) からの委員を加える |
1. 医師 (内科) 2. 医師 (専門医) 3. 患者の権利擁護委員 (看護婦のケースが多い) 4. 法律家 5. 病院管理者 6. ソーシャルワーカー 7. 精神科医 8. 宗教・倫理専門家 (バイオエシックス担当) 9. 地域代表 |
1. 医師 2. 看護婦 3. バイオエシックス (宗教・法律) 専門家 4. 法律家 5. 身障者またはその組織代表・その専門家 6. 地域代表 7. 医院内医療スタッフ代表 8. 病院管理者 |
バイオエシックスの展開 |
バイオエシックスという考え方が、広く受け入れられるまでには多くの犠牲や努力が払われてきた。特に、バイオエシックスが最初に芽生えた米国では、人種間対立などからアフリカ系アメリカ人 (黒人) をはじめとするマイノリティー (社会的少数者) が、人体実験の犠牲となった背景がある。わが国が第二次大戦中に中国東北部 (満州) で行った人体実験やナチス・ドイツが行った人体実験も、常識を完全に逸脱した犯罪行為である。これらに対する反省から、バイオエシックスという考え方が生まれてきた。 |
バイオエシックス関連年表 (1947年~) | ![]() |