木村利人教授・全業績データベース
(研究助成データベース)

SHORT CUT1989年度「バイオエシックス教育カリキュラム・教材開発とその応用に関する比較文化論的考察」(個人) | 1990年度「遺伝工学の法的問題に関する研究」(共同) | 1996~7年度 文部省科学研究費補助金基盤研究「アドバンス・ディレクティブ (事前指示) の日本社会における適用可能性」(共同)

1989年度 特定課題研究成果概要 (個人)
バイオエシックス教育カリキュラム・教材開発とその応用に関する比較文化論的考察 (課題番号;63A-116)

研究者所属 資格 氏名
人間科学部 教授 木村利人

<研究成果概要>
 バイオエシックスの形成が欧米先進国の極めて急速な生命医科学技術の発展に対応して展開されつつあり、その学説や理論も西欧的価値観や倫理観を基盤としてきたことは云う迄もない。
 本研究においては、このような状況をふまえつつ、非西欧社会、特にユダヤ・キリスト教的伝統とは異なった宗教・文化的環境の中で同様の医科学技術の展開がどのようにうけとめられるべきかを、「人権」に焦点を合わせつつ研究・調査し、私たちの国の教育と文化の実情に合った教材の開発と応用を試みようとした。
 この研究成果の一部は、NHK・エンタープライズ社のProducer及びDirectorの協力により、Doctor's Video「医の心」編にまとめられ、教材として既に、一部の医科系の大学、研究機関、医師会などで利用されはじめている。
 しかし、まだ対象として、取り組むべき多くの課題が残されているので、今後とも継続的に、世界諸国の文化におけるバイオエシックスの諸問題をテーマに研究調査をすすめて行く必要のあることを痛感している。
 なお本研究テーマにおいて、特に重要な問題点として指摘されたのは、次の諸点であった。�日本の文化の中での医療従事者の役割り、�医師のパターナリズム (父権的温情主義の問題点)、�患者の側における依頼心の強さ (甘えの構造)、�患者の権利という発想の欧米における意味と、我が国におけるズレ、�真実告知の是非、�医療はサービスであるという意識の医療側における欠如、特に前項�との関連での医師の権威主義、閉鎖性の問題点、�医療におけるコンシューマーリズム、�健康教育 等々。
 いずれにせよ、上記の諸点をふまえつつ、バイオエシックス教育のカリキュラムと教材の開発の促進のための具体的提案を為しつづけて行く計画である。


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1990年度 特定課題研究成果概要 (共同)
遺伝工学の法的問題に関する研究 (課題番号;63B-1)

研究者所属 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 浦川道太郎
(代表者) 法学部 教授 内田勝一
(代表者) 法学部 教授 鎌田薫
(代表者) 人間科学部 教授 木村利人

<研究成果概要>
 遺伝子工学は、人類の未来に大きな可能性をひらく技術であると期待され、業種を越えた多くの企業が積極的に投資をおこなっている。しかし他方において、技術に内在する危険性から、その抑制を主張する声も大きい。新技術が生まれ、展開する際に生じる社会的な軋轢がここに現れているものといえよう。
 本共同研究では、この遺伝子工学を素材として、新技術の発展に法がいかに対応できるか、また、いかに対応すべきかという広い視点に立って、(1)技術開発と倫理、(2)技術開発と法的規制、(3)研究開発と契約、(4)技術の財産権的保護 (特許権・著作権)の諸側面が総合的に検討された。このため、共同研究者は、社団法人民事法情報センターの協力を得て、学外の研究者を含めたバイオ法研究会を組織として調査・研究をおこなった。
 研究成果は多岐に及び、要約してここに示すことはできないため、この間に共同研究者を中心に発刊した雑誌「L & T (Law & Technology)」[社団法人民事法情報センター・発行]に発表した緒論考を参照頂きたい。
 なお、共同研究者が本共同研究の枠内でおこなった報告及び著した論文としては、下記のようなものがある。
「バイオエシックス:形成の要因と国際的動向」(木村利人)
「西ドイツにおける『遺伝子工学法』制定の動き」(浦川道太郎/「L & T」第4号14頁)
「バイオ法におけるトレードシークレットの諸問題」(内田勝一)
「『財産的情報』の保護と差止請求権:不正競争防止法改正案と民法理論」(鎌田薫/「L & T」第7号13頁)など。


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1996~7年度 文部省科学研究費補助金
基盤研究 (C) (2) 研究成果概要 (共同)

アドバンス・ディレクティブ (事前指示)
の日本社会における適用可能性 (研究課題番号;08672579)

研究代表者 木村利人 (早稲田大学人間科学部 教授)
研究分担者 赤林 朗 (東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 助手)
研究協力者 甲斐一郎 (東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 教授)
福原俊一 (東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻 講師)
大井 玄 (東京大学大学院医学系研究科 名誉教授)

<研究成果概要> (詳細はこちらを御覧下さい)
 アドバンス・ディレクティブ (事前指示 : advance directive) とは、患者あるいは健常人が、将来自らが判断能力を失った際に自分に行われる医療行為に対する意向を前もって意思表示することである。事前指示には大きく分類して、
  (1) 医療行為に関して医療者側に指示を与える (例えば終末期状態での積極的延命治療の中止)
  (2) 自らが判断できなくなった際の代理決定者を委任する
 という2つの形態がある。例えば (1) で文書の形で表されたものが、一般にリビングウィルと呼ばれるものである。
 1995年3月の横浜地裁東海大事件の判決では、終末期状態における治療行為の中止や間接的安楽死を許す要件の一つとして、「患者本人の意思表示」が示された。この判決は、「患者の意思を確認する方法」という基本的に難しい問題を社会に提示したといえる。また、1997年10月に施行された臓器移植法にはドナー (臓器提供者) の生前の意思を表す文書の必要性が組み込まれている。しかし、これらの文書の有効性や現場で起こりうる問題点について事前に詳細な検討はなされていない。また本人の意思が不明な際の家族による代理決定については、現在の重要な論点である。
 本研究は、日本の医療事情と日本の文化的側面に配慮しながら、日本の医療現場における事前指示の具体的な展開の可能性を模索するものである。即ち、(1) 事前指示の日本の医療現場での必要性の検討;(2) 必要ならば、どの様な形式のものが可能か (口頭か文書かなど);(3) 代理決定者としての日本の家族の役割の検討;(4) 事前指示の法制化の必要性の検討;(5) 各疾患ごとの事前指示、例えば末期がん患者、神経性難病の事前指示のありうる形態はどのようなものか、などを検討する。
 本研究は、事前指示の日本国内の臨床現場での実施の可能性を検討するとともに、事前指示の今後の医療全般に対する有用性を、患者と医療従事者側の視点より検討したものである。これらの知見が今後の日本における事前指示のあり方に、何らかの役にたつことを期待している。同時に本研究で得られた成果は、国際的動向をも視野においている点で、諸外国へ日本の現状と方向性を紹介するという役割を持つ点でも重要である。日本の事前指示に対する理解、解決法は諸外国での議論に参考になることも期待される。

 

  • なお、本研究の詳細はこちらを御覧下さい。 GO!!
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