選挙制度の選択について
選挙制度とういうものには、それが如何なる形態であるにせよ、何らかの問題が常に不可逆的に包含されています。また、真に民意を決定的に表現する結果をもたらし得る制度を構築することは非常なる困難を伴うものです。
確かに今まで、必ずしも国民の意思が選挙の結果にそのまま反映されたことは少なく、常に世論と選挙結果との間にズレが生じていたように思われます。総選挙の際の世論調査などでは「揺れ動く国民の政治意識」と表現された匿名的な民意の変動がよくクローズアップされ、常に国民の意思が選挙に多大な影響を及ぼしているように見えますが、意外に現実の政治権力の性格は比較的安定した保守的な状態が保たれ、ただ選挙の結果だけが特定の政党の圧勝、大敗などと問題視されているように感じられます。こういった至極当たり前の「選挙観念」こそ、国民全体に蔓延した選挙制度そのものの根源的なパラドックスの象徴のように思われてなりません。
国民全体の社会的合意に基づく意思決定ルールが最も端的に表現されるのは選挙の場とも考えられますが、いたずらに国民の意識の統合を志向して社会全体の意思決定の選択の幅をせばめる危険性も注意しておかなければならないことであると思います。
従って、国会を運営する政党間の政策調整を第一義に考える選挙制度がもたらす議席配分は絶対に避けねばならないことであり、あくまでも有権者である国民の意思が地域ごとに主体的に表れ、且つ、それらが中央の国会の政策決議の場において公正に扱われるようなシステム構築を志向しなければいけないでしょう。
しかしながら、公正なる選挙制度への志向は絶えず「効率的な政治運営」としての表面的な妥協に転化する恐れがあり、議席のみを問題視して小選挙区制や比例代表制などの便利な部分を当てはめるのはいわゆる「対処療法」的効果はあっても、公正なる制度への根治効果は何も起こらないように思われます。
改革といえば確かに急激に何でも変えてしまえば良いというものではありませんが、「制度」自体が常に時勢に流動的に変容していくものであることを考えれば、社会や国民生活に不可逆的な影響を与える選挙制度こそ、制度そのものの選択肢を拡げ、それらの意思決定オプションを併用させる形態を構築し、それによって多元性を前提にした社会における様々な論議を喚起させる選挙を実施すべきではないでしょうか。そこから本当に公正で妥当なる合意が導かれるものであると私は考えます。(終)
(河原直人)
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